柴田知之 教授

研究紹介

 沈み込み帯は海洋プレートがマントル内に沈み込む場ですが,ここでは地球科学的に重要な様々な現象が起こっています。これらを,火成岩の化学組成・同位体組成の解析から解明することが,私の進めているメインの研究です。このような研究から,1)太平洋プレートが沈み込む東北日本弧では,海洋プレートが脱水反応を起こし深部で水をマントルへと放出するとともに,水に溶けやすい元素をマントルに付加していること,2)フィリピン海プレートが沈み込む九州地域では,沈み込む海洋プレートが脱水反応だけではなく部分溶融している場合があること,部分溶融は九州南部では起こっていないことなどの成果を上げてきました。これらの研究から,火成岩の源であるマグマが,どんな物質を起源に,どの様なプロセスでできたのかを知ることができます。また,沈み込み帯で,様々な物質がどのように移動・循環しているのかも議論することができます。
 一方で,焦点を絞った研究も行っています。例えば火山活動が活発な桜島のマグマに関して,その起源・進化プロセス,さらには移動経路を明らかにしようと,桜島溶岩の化学組成・同位体組成の研究も行っています。また,富士山の下には,富士山に覆われて今は見ることができない先小御岳と呼ばれる古い火山体があります。この火山のマグマが,起源は富士山のマグマと共通だが,分化する深度やその時のマグマ中の水の量が異なる条件で,生成されたこともわかりました。このように,一つの火山を形成するマグマを詳細に研究することで,将来的には火山の噴火予知に貢献できるような研究をしたいという夢を持っています。
これまで述べてきたような研究を行うため,元素濃度や同位体組成の分析法の開発も行ってきました。現在は,誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)による微量元素分析や,表面電離型質量分析計によるストロンチウム・ネオジム・鉛などの同位体分析が,私の研究室で可能です。この分析技術を用いて,私の専門とは異なる研究も様々な研究者の方々と協力して行ってきました。その中には,ストロンチウム同位体分析をして,お茶の葉の生産地の判定を試みるといった研究も含まれています。このように,メインの研究テーマに励むとともに,様々な異なる分野の方々にも分析技術を提供し,多分野が融合するような研究活動も大切にしてゆきたいと思っています。

主な研究業績

  • Shibata, T., Yoshimoto, M., Fjii, T. and Nakada, S., Geochemical and Sr-Nd isotopic characteristics of the Quaternary Magmas from Pre-Komitake volcano, Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 2015.
  • Shibata, T.., Yoshikawa, M., Itoh, J., Ujike, O., Miyoshi, M. and Keiji, Takemura., Along-Arc Geochemical Variations in Quaternary Magmas of Northern Kyushu Island, Japan, in Orogenic Andesite and Crustal Growth (Gómez-Tuena, A., Straub, S. M., and Zellmer, G. F., ed.), Geological Society of London Special Publications, 385, 15-29, 2014.
  • Shibata, T.., Suzuki, J., Yoshikawa, M., Kobayashi, T., Miki, D. and Takemura, K., Geochemical and Sr-Nd-Pb isotopic constraints on the origin and magmatic evolution of Quaternary lavas of Sakurajima volcano, southern Kyushu Island, Japan, Bulltin of the Volcanologycal Society of Japan, 58, 43-58, 2013.

学生の研究テーマ

  • 岡田郁生(M1)「桜島火山の地球科学的研究」
  • 平山剛大(M1)「姫島火山群の第四紀マグマの進化過程」
  • 中野佳祐(B4)「雲仙マグマの地球化学的時間変化と形成過程」
  • 吉田拓真(B4)「由布・鶴見火山のPb同位体組成」
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